コストを加味すると、インデックスファンドは、アクティブファンドよりも平均して高いパフォーマンスを残すことは、投資の世界ではよく知られている事実です。アクティブファンドはコストが高いため、結局コストの安いインデックスファンドには勝てないんですね。
一方、「相場が急激に変動する時期には、アクティブファンドに優位性がある」とも言われることがあります。
「指数の動きに連動した動きしか出来ないインデックスファンドに対し、アクティブファンドは市場の変動に柔軟に対応することで、パフォーマンスを最大化できるから」というものがあります。
もっともらしいこの説明、果たして本当なのでしょうか。
コロナショックで市場が急激に変動した2020年。この仮説が正しいのなら、アクティブファンドはインデックスファンドに比べて、高いパフォーマンスを残しているはずですね。
Morningstarの「Active/Passive Barometer」という資料を基に、2020年のアクティブファンドのパフォーマンスを振り返ってみましょう。
結論は「市場が大きく変動する時期であっても、アクティブファンドの優位性は見られない」です。
Morningstar「Active/Passive Barometer」とは
モーニングスターの「アクティブ・パッシブバロメーター」は、年に2回発表されるレポートです。
これは、アクティブファンドのパフォーマンスを、パッシブファンド(主にインデックスファンド)のパフォーマンスと比較するレポート。
このレポートには、以下のような特徴があります。
アクティブファンドと、パッシブファンドとを直接比較
このレポートは、アクティブファンドのパフォーマンスを、「パッシブファンドのパフォーマンス」と比較します。
例えば、米国株に投資するアクティブファンドであれば、S&P500やRussel1000に連動するインデックスファンドのパフォーマンスとの比較となります。
つまり「指数自体と直接比較しない」ということです。
投資家は、指数そのものを直接購入することは出来ません。指数に「連動するインデックスファンド」を購入できるだけです。
アクティブファンドとインデックスファンドとを比較するこのレポートでは、現実の対抗馬であるインデックスファンドと比べた時の、アクティブファンドのパフォーマンスを比べることが出来ます。
コスト込みでのパフォーマンスを計測
また、このレポートでは、コストを加味した時のパフォーマンスを測定対象としています。
アクティブファンドの管理コストは、1%を切るものから、2%を大きく超えるものまで、様々です。
1%以上もコストに差が生まれると、その差がパフォーマンスに与える影響も甚大。
このレポートでは、実質的なパフォーマンスを比較することが出来ます。
では、2021年3月に発表された「アクティブ/パッシブ バロメーター」から、2020年のアクティブマネジャーのパフォーマンスを振り返ってみましょう。
2020年のアクティブファンドのパフォーマンスは?
「アクティブファンドは、インデックスファンドと比べ、市場の変動に上手く対応できるのか?」という命題。
コロナ禍の2020年は、市場の大きく変動した為、その命題に答えるデータを取得するのにはうってつけの年でした。
調査の結果、対象となった約3500本のアクティブファンドの内、2020年に平均的なパッシブファンドを上回るパフォーマンスを残したファンドの割合は、49%でした。つまり2つに1つのファンドしかパッシブファンドを上回っていたということになります。
これはもはや「イチかバチか」レベルの話であり「アクティブファンドの方が市場の変動に対応できる」という考えには、あまり意味が無かったということになります(少なくとも2020年においては)。
カテゴリー別の「成功率」は?
以下は、ファンドの投資対象カテゴリ別の「成功率」を、2019年と2020年とで比べたものです。
「成功率」とは、そのカテゴリ内で、パッシブファンドのパフォーマンスを上回っていたアクティブファンドの割合を示しています。
右側の緑とピンクで網掛けされた部分に記入された数字は、2019年と2020年の成功率の差を示しています。緑は「2019年よりも成功率が上昇」、ピンクは「2019年よりも成功率が低下」していることを示します。
全体的に見れば、株式を投資対象とするファンドの成績は軒並み低下している一方で、債券やREITを対象とする商品はそれ程落ち込みが大きくなかったと言えるかもしれません。
ただ、そうと言い切れる程明確な差が出ている訳でもなく、結局「市場変動がある年であろうと、パターンに大きく変化はない」と言えますね。
長い目で見れば、インデックスファンドが優位なことに変わりは無い
「2分の1でパッシブファンドに勝てるなら、アクティブファンドも捨てたものじゃない」と思うかもしれません。が、そうではありません。
「2分の1」というのは、2020年という1年を切り取った場合の話。
では、この分析を10年、20年と続けていくと……?
その分析も、このレポートでは行っています。
全ての投資対象についての、長期成功率の分析は行っていないので、「米国大型株」を対象としたアクティブファンドについての以下の分析を見てみましょう。
右側の赤い枠で囲まれた部分は、調査期間ごとのアクティブファンドの成功率です。
1年での成功率は31.1%であるのに対し、20年間では12.8%の成功率です。
つまり、1年間だけを見れば、3つに1つのアクティブファンドがパッシブファンドに勝利します。
しかし、20年間という時間のテストに耐えるファンドは、8つに1つしか無いということです。
これは、あくまで米国大型株を対象とするアクティブファンドの結果ですが、他の投資対象でも概ね同じような結果となっています。
それ位、長期間インデックスファンドに勝ち続けるのは難しいことなんですね。
ということで、今回はアクティブ/パッシブ バロメーターを題材に、アクティブファンドの2020年の勝率を振り返ってみました。アクティブファンドは時に魅力的に見え、一方でインデックスファンドは時に地味でつまらないように見えます。もちろん、魅力的なファンドに投資することには問題はありませんが、投資をするとしても、今回お伝えしたような情報を頭に入れておくことは有用です。
参考になさってくださいね。