「15年以上株式に投資すれば、損はしない」の具体的根拠(ただし、米国株のみ)

「15年以上投資をすれば損をしない」という言説

「15年以上投資をすれば、損をすることはない」「だから、長期投資をしよう」とは、投資業界でまことしやかに囁かれる言説。

投資初心者を勇気づけてくれる言葉でもありますが、同時に「そんなに上手い話があるのか?」と思ってしまうのが人情です。むしろ、そうした疑いを持たないで、意気揚々と投資をしてしまう方が危険です。

今回は「15年以上投資をすれば損をしない」ということの根拠を、2021年にグローバル金融機関であるクレディ・スイスが発表したレポートからご紹介します。
※ 出所:Credit Suisse Global Investment Returns Yearbook 2021

ポイントは、以下の3つです。

  1. 「16年間以上」投資をすれば、米国株の期待リターンはプラス
  2. 米国株の平均年リターンは「6.6%」
  3. ただし日本株では「51年間以上」の期間を見なければ、プラスにならない

「16年」で期待リターンはプラス:米国株の実質リターン

下のグラフは、米国株について、1900年から2020年までの間で、投資期間を10年間から120年間の幅で取った時の、期間別の実質リターンの幅を示しています。
濃い緑色の部分は、実質リターン上位10%にあたる期間のリターン幅を指します。
薄い緑色の部分は、実質リターン上位25%にあたる期間のリターン幅を指します。

出所:Credit Suisse Global Investment Returns Yearbook 2021

例えば、「10年」という期間を取ったとしましょう。
すると、1900年-1909年、1901年-1910年から始まり、2011年-2020年までの、「10年」の全てのパターン(112通り)について、実質リターンを集計します。そのリターンの幅が、グラフに表示されています。

10年という期間は投資の世界では短い期間です。
その為、実質リターンには、かなりの振れ幅が生じていることが分かります。
おおよそですが、年間リターンが、最も高い期間では平均約17%、最も低い期間では平均約-5%程度となることが分かります。

10年という幅で見ると、期待リターンがマイナスになる可能性も十分にありますね。
これでは「損をしない」とは言えません。

では、どれくらいの期間を取れば、期待リターンの幅がプラスの範囲に収まるのでしょうか。

それは、グラフのx軸を右にたどっていくと分かります。
期間が長くなればなるほど、期待リターンの幅が狭くなっていきます。
そして、16年という期間を取った時に、期待リターンの幅が全てプラスに収まるようになるのが分かります。

ここから「16年以上、株式投資を続ければ、期待リターンがマイナスとなることは無いだろう」という統計上の推測が成り立ちます。ネット上の噂にも、データに基づくリターンがあることが分かりますね。

ちなみに、120年間を通しての、平均リターンは年6.6%でした。

「51年」かけなければ期待リターンはプラスにならず:日本株の実質リターン

「やった!じゃあとりあえず株式に投資して、16年以上寝かせておけば儲かるんだね」と思ってしまうかもしれませんが、現実はそう甘くありません。「16年」という数字はあくまで「米国株のみに投資をし続けた場合」だからです。そのデータを以って、他の国も同じだろうと推論してしまうのは、少し乱暴です。

日本では、何年間投資をすればリターンがプラスになるのでしょう。

日本株の場合の、投資期間別期待リターンの推移は、下のグラフの通りです。

出所:Credit Suisse Global Investment Returns Yearbook 2021

まず、期待リターンの幅が非常に広いことが目につきます。

結果として、期待リターンの幅がプラスの範囲内に収まるのは、なんと「51年」という投資期間を取ってからでした。統計的には、51年間投資をし続ければ、期待リターンはプラスであると言えそうです。

確かに、長期的に見れば、日本株への投資による期待リターンはプラスであると言えます。

ただし、忘れてはならない重要なことがあります。

長期的に見れば、我々は皆死んでいるということです。

「51年間」という投資期間は、あまり現実的であるとは言えないでしょう。

ちなみに、120年間を通しての平均リターンは、約4%。ここでも米国株に負けてしまっています。

もちろん、未来は分からない

ここ120年で、16年間という期間を取って米国株投資を行えば、リターンがマイナスになることはありませんでした。それは統計的な事実で、揺るがしようがありません。

ただ、それは未来も同様だということを意味してはいません。

  • 米国が経済の中心である時代は終わり、今後100年間市場が低迷を続けるかもしれない。
  • 起業や投資に有利な米国の制度が変わり、力のある企業が育ちにくい状況となるかもしれない。
  • はたまた、戦争が起こり、経済が根底から破壊されてしまうかもしれない。

それでも、過去の市場の歩みを知ることに意味が無い訳ではありません。
歴史の中で市場がどう動いてきたのかを知ること、それは投資戦略を検討する上で、判断の確固とした基盤となってくれるのです。

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