もし、最高のパフォーマンスを出す株が分かっていたら、レバレッジは選択肢に入るのか?

ポイント

  • トップ10のパフォーマンスを示した株に対して、レバレッジをかけて投資した場合の破産確率をシミュレーション
  • レバレッジ割合を高めるにつれ、破産確率は上昇。トップ10の株であっても、破産の可能性は免れない
  • 一般投資家に、レバレッジをかけた投資は勧められない。やるとしたら、失っても惜しくない金額で

レバレッジ投資:資金が足りない投資家にとってのベストアンサー?

「それ程資金が多くはないけれど、利益は最大化したい」と思う個人投資家は、「レバレッジ」を使った取引を一度は考えるものでしょう。
一般的に、レバレッジ取引とは、担保として預けた資金の、何倍もの資金を証券会社から借り、そのお金で投資を行うことを指します。

100万円しか手元に無い個人投資家が、10倍のレバレッジを効かせれば、1000万円もの資金を運用することが出来ます。「株というのは長期的に見れば上がるって聞いてるし、それならリターンが最大化出来るレバレッジ投資って良いんじゃないの?」と投資家が考えることに、何の不思議もありません。

誘惑の大きいこの「レバレッジ取引」について、「Of Dollars And Data」の記事「Borrow…If You Dare」が、興味深い切り口から検討しているので、ご紹介します。
※ https://ofdollarsanddata.com/borrow-if-you-dare/

もし、今後1年最高のパフォーマンスを発揮する株式をあなたが知っていたら…

あなたが1年後の新聞を持っていると想像しましょう。新聞の最初のページには、前年にトップ10のパフォーマンスを示した株のリストが載っています。そして、銀行は、無利息で必要なだけの資金を提供すると言っています。

10,0000ドルから始めるとしましょう。これらの上位10株に投資するために、いくら借りますか?

この質問に対して「借りるだけ借りよう。レバレッジ100倍でも1000倍でも、とにかく借りて投資に回す」と答えたくなるかもしれません。トップ10のパフォーマンスを出す株が分かっていて、目の前には無尽蔵の資金を生み出す打ち出の小槌もあるんです。そんな状況で、どうしてブレーキをかける必要があるでしょうか?

それは間違いです。

ポイントは「株は常に上がり続ける訳ではない」ということです。

パフォーマンストップ10の株式に対するレバレッジ投資をシミュレーション

著者は、この問に対し、以下のような条件でシミュレーションを行いました。

  • 2014年、2015年、2016年、2017年につき、それぞれの年でトップ10のパフォーマンスを示した株の日次リターンを集計
  • 10銘柄均等に重みづけをしたポートフォリオを作成
  • 2014年から2017年の間で、252日(取引日数に等しい)をサンプリングして、1年分のシミュレーションコースを作成
    ※ 例えば、1日目が2014年3月4日なら、2日目は2016年9月5日、3日目は2013年……と252日目まで続くコースを作成する
  • 上記のステップを、レバレッジ比率を変えながら、反復
  • 証拠金(元々の10000ドル)が全て失われるシミュレーションの数を計測
    ※ 自己資本が0となるパターンが何度あるかを確かめる

つまり、「ランダムな開始日で、トップ10の株に一年間投資したらどうなるか、1000回繰り返してみた」ということになります。

シミュレーションの結果:トップ10の株でも破産リスクは十分

このシミュレーションで確かめたいのは「限りなく高いパフォーマンスを出した株に投資した場合に、証拠金が全て失われるということは起こり得るのか?」ということ。
さて、その結果はどうなったのでしょう。

以下は、4倍のレバレッジをかけた(つまり10000ドルの自己資本に、30000ドルの借入金を合わせ、40000ドルとして運用した)場合のシミュレーション結果です。

https://ofdollarsanddata.com/borrow-if-you-dare/より引用

30000ドルに引かれた赤い破線は、元本の10000ドルが全て失われる境界線です。このシミュレーションでは、1000回の内1回、元本が全て失われてしまいました。確率で言うと、0.1%です。

https://ofdollarsanddata.com/borrow-if-you-dare/より引用

では、レバレッジを更に高めてみるとどうでしょう。レバレッジ10倍(自己資本10000ドルに対し、借入金90000ドル)にすると、元本消失の可能性(90000ドルまで投資資金が減衰する可能性)は7%まで跳ね上がります。

上記は、レバレッジ比率と、破産確率とをグラフにしたものです。レバレッジの比率を高めると、急激に破産可能性が上昇し、レバレッジ50倍ではその確率は50%弱に達します。その後の破産確率上昇は緩やかになり、レバレッジ100倍を超えてからは、概ね70%程度に収まるようです。

「長期的に見れば、株式市場は成長する」のは統計的な事実です。だからこそ、レバレッジをかけて、その成長を最大限に享受したくなるのは投資家の心理です。

そこで見過ごされているのは「上がり方」の視点です。いかなる株と言えど、同じ比率で成長し続けるわけではありません。株は上昇します。ただし、上下を繰り返し、時に低いレベルで安定する時期も乗り越えて、です。

当然ながら、レバレッジが増えれば、資産額の変動率は上昇し、リスクは高まります。上手く下がり相場を切り抜けられれば、それに見合ったパフォーマンスが得られるのも事実です。しかし、それは自己資本を担保とした、ある意味ではギャンブルであるのも事実。投資機関の間に、日次リターンが継続的にマイナスとなる時期があれば、いとも簡単に破産となる可能性が存在するのです。

更に重要なのは「トップ10のパフォーマンスを示した株」であったとしても、当然のように破産しているだということ。それが分からない中で、レバレッジをかけて投資をする際のリスクは、推して知るべきでしょう。

結論:レバレッジは基本的にNG。やるなら自己資本の1%程度。

この記事が教えてくれるのは「レバレッジはリスクもリターンも極大化する」そして「最高のパフォーマンスを見せる株に投資したとしても、破産の可能性は存在する(レバレッジ比率が高まればその可能性も高まる」という事実です。

「絶対に上がる」と思える株や業界、産業を見つけた時、そこに投下する資本をレバレッジをかけて最大化し、リターンを最大化したいと思うのは通常の心理でしょう。そこで忘れてはいけないのは「その投資対象が実際に素晴らしいパフォーマンスを示したとしても、あなたの投資結果が素晴らしいものとなるとは限らない」ということ。

パンピー投資家の私にとって、このリスクは取ることが出来ないし、取る必要もありません。

「これだ」と思える投資対象に、どうしても、どうしてもレバレッジをかけて投資したいというのであれば、投資額は総資産額の1~2%程度に留め(失っても惜しくないよう)、短期投資にしておく(長期にすればするほど、どこかで「地雷」を踏む確率が高まる)ことでしょう。

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